夏草や兵どもが夢の跡

夢の跡を鳥辺野で供養しています。

田村徳治の行政学(2):「一体性の危機」と「田村行政学」

辻清明は1962年に、行政学の課題として、行政過程で自由裁量や政策決定を行う範囲が拡大している中では、手段の選択においても、価値判断が当然導入されてくることを考慮して政治と行政を截然と区別する態度に疑義を呈した[1]。また、行政における価値の問題…

田村徳治の行政学(1):その難解な用語法

蠟山政道と並んで日本の行政学の草分けである田村徳治(1886-1958)に関する先行研究は極めて少なく、管見の限り同世代(蠟山)または一世代下(辻清明、長濱政壽、吉富重夫ら)の行政学者によって書かれたものしか存在しない。その一因としては、蠟山政道及…

三牧聖子『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書、2023年)

三牧聖子『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書、2023年)。 ようやく積読を読み終えました。積んでいる間、帯の三牧先生と何度も目が合い気まずい思いをしました。ちなみに、裏表紙も三牧先生の写真があるので逃げられません笑 さて、書評みたいなことは書…

「堀江保蔵名誉教授に聞く」(『経済論叢』第135巻第4号、1985年)

「堀江保蔵名誉教授に聞く」(『経済論叢』第135巻第4号、1985年)読了。 PDFは repository.kulib.kyoto-u.ac.jp 。 堀江保蔵さんに関心を持ったのは、アメリカ研究の斎藤眞さんが「戦前、戦時下のアメリカ研究者は、高木八尺は勿論だけれどもその他にもいろ…

安部磯雄のアメリカ留学に思うこと

宮本盛太郎『宗教的人間の政治思想――安部磯雄と鹿子木員信の場合――(軌跡編)』(木鐸社、1984年)読了。 文字通り、本書は「軌跡編」で著者の意図する「研究編」の前段階としての「資料編」です。そのせいもあってか、やはり引用が多く、読み物としての流れ…

百瀬宏先生の回顧

百瀬宏「江口朴郎「巻頭言」に寄せて」(『国際関係研究所報』第50号、2015年)( https://www2.tsuda.ac.jp/kokken/50momose.pdf)読了。 百瀬先生のフィンランド史の研究歴が回顧的に書かれています。百瀬先生って国関ご出身で江口朴郎先生門下だったので…

これなんだ? 井上寿一『矢部貞治:知識人と政治』(中央公論新社、2022年)

井上寿一『矢部貞治:知識人と政治』(中央公論新社、2022年)読了。苦しかったです。 文字通り、矢部の生涯を追った作品です。矢部の一生を知るには手ごろかもしれません。 以上です。 以下思ったことをつらつらと書いていきます。いちいち該当箇所は明示し…

田畑茂二郎(の回想)精読2

田畑茂二郎『国際社会の新しい流れの中で――一国際法学徒の軌跡』(東信堂、1988年)を取り上げます。今回は助手時代からです。興味深いです。 ・長濱政壽のこと。当時のマルクス主義の流行から物事を階級的立場から見るという傾向が多かった中、「長濱君は階…

田畑茂二郎(の回想)精読

田畑茂二郎『国際社会の新しい流れの中で――一国際法学徒の軌跡』(東信堂、1988年)では彼の学問人生が座談会形式で振り返られますが、学生時代を主に読んでいきたいと思います。よきでした。では気になったところをぽつぽつと書いていきます。 まず、田畑の…

『原理日本』と聖徳太子

中島岳志「『原理日本』と聖徳太子――井上右近・黒上正一郎・蓑田胸喜を中心に――」(石井公成監修『近代の仏教思想と日本主義』法藏館、2020年)読了。 『原理日本』の同人たちが、「親鸞―聖徳太子―明治天皇」というラインをいかに構築していったかという考察…

京大人文研と「共同研究」

高木博志「「日本部」の共同研究の思い出」(『人文』第69号、2022年)読了。よきでした。 軽いエッセイです。文章は1980年代半ばに、京大人文科学研究所の共同研究、飛鳥井雅道班の報告を聞いた筆者の思い出から始まります。 東大・京大では戦前は前近代し…

橋桁を叩き壊しながら「架橋」に希望を馳せる

森川輝一「不確かな橋の上で――タクシー運転手と政治思想史研究者の間――」(『創文』516号、2009年)読了。よきでした。 世に流れる数多の言葉――耳障りのよい物語から専門家にしか(にさえもよく)分 からない理論まで――に安易な橋を架ける必要はないのではな…

戦争と仏教者、翼賛の内面をトレースする

東真行「聖徳太子と日本主義――金子大榮を中心に――」(石井公成監修『近代の仏教思想と日本主義』法藏館、2020年)読了。勉強になりました。 「十五年戦争」期から盛り上がる、「日本精神」と聖徳太子のブームですが、金子大榮という仏教学者が、単に国策に迎…

京都大学総合生存学館(思修館)に「自治」はあるのか??

『京都大学新聞』(怪しくない方です)に「​総合生存学館 運営に全研究科が参画へ 学館長を総長が「指名」」​(2022年7月16日)という記事がありました。詳しくは2022年6月28日の京都大学達示55号によります。 記事によると、変更点は主に以下の通りです。 …

京大経済学部助教授(当時)堀江英一による瀧川幸辰への公開批判

これも昔のものの再掲です。京大経済学部の『思いで草』(1969年)にあった「堀江英一さんが滝川さんを批判する論文をかいて、あの便所の入口(法経新館西)のところに大きく掲示した」と言われる「例の堀江論文」(豊崎稔)を偶然見つけました。まさか堀江…

Arthur Alfaix Assis, “Schemes of Historical Method in the Late 19th Century: Cross-References between Langlois and Seignobos, Bernheim, and Droysen,” in Luiz Estevam de Oliveira Fernandes et al. (eds.), Contributions to Theory and Comparat…

学生諸君には賢明な判断を求める。(令和4年10月18日付告示第7号)

<font size="4"><b>​<a href="https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2022-10-18-0">​<font size="4"><b>京都大学 令和4年10月18日付告示第7号</b></font></a>​</b></font> <h1><font size="2">​​<a href="https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2022-06-01-0">令和4年6月1日付告示第4号</a>​のほぼ使いまわしですね。​</font></h1>以下転載します。

日中両国の戦後を代表する知識人対談

近藤邦康「一九八九年三月二〇日 丸山眞男・李沢厚対談」(『東京女子大学比較文化研究所附置 丸山眞男記念比較思想研究センター報告』第十号、2015年) 1989年3月20日14時30分から18時まで、岩波書店旧館丸山研究室で、丸山眞男と李沢厚の間で行われた対談…

ご挨拶

こんにちは。 plaza.rakuten.co.jp から移転してきました。 よろしくお願いします!