宮本盛太郎『宗教的人間の政治思想――安部磯雄と鹿子木員信の場合――(軌跡編)』(木鐸社、1984年)読了。
文字通り、本書は「軌跡編」で著者の意図する「研究編」の前段階としての「資料編」です。そのせいもあってか、やはり引用が多く、読み物としての流れはそうスムーズではありません。ただし、資料は資料として、様々な事実が摘記されており考えさせられました。
そもそも本書は安部磯雄の明治期と鹿子木員信の思想を俎上に載せたものです。
その意図としては両者とも、内村鑑三をはじめとしたキリスト教に強く惹かれたことにあります。
鹿子木の戦時中の言動を見ているとキリスト教に惹かれたとは意外でした。このことは別記事に譲ることとして、今回は安部磯雄について。
あの時代の社会主義者は片山潜然り19世紀末にアメリカに行っていますよね。
そこで注目すべきは当時のアメリカのソーシャル・ゴスペル運動の社会改良主義から学ぶことが多かったところでしょう。ラウシェンブッシュあたりは宗教家として捉えられましょうが(たぶん)、本書にはそれだけでなくウィスコンシン大学のイーリー(Ely)との接点も挙げられています。
イーリーは、安部だけでなく、新渡戸稲造の思想形成にも影響を与えた革新主義者で、
本書では両者ともキリスト教の文脈で描かれています。ただし、「革新主義」的思想が必ずしもキリスト教に基づいたものとは思えず、そのあたりの日本への影響というのはあまり論じられていないのではと思います。(試論的なものとしては湯浅拓也先生の青学での2020年度博士学位請求論文参照)
ごちそうさまでした!!