夏草や兵どもが夢の跡

夢の跡を鳥辺野で供養しています。

三牧聖子『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書、2023年)

三牧聖子『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書、2023年)。

 

 ようやく積読を読み終えました。積んでいる間、帯の三牧先生と何度も目が合い気まずい思いをしました。ちなみに、裏表紙も三牧先生の写真があるので逃げられません笑

 

 さて、書評みたいなことは書けないのは予めご承知おきください。

 そもそも本書に書かれている様々な固有名詞は日本語メディアではほとんど目にすることがありません(私の知識不足の可能性有)。例えば、オバマ政権下でのドローン攻撃で重傷を負ったというパキスタン人の「ファヒーム・クレシ」氏(本書、130頁)。私がGoogleで「ファヒーム・クレシ」と入力して検索してもそれと思しきものは二件だけで、どちらも三牧先生の論考でした。あくまでも一例ですが。やれトランプだの、やれバイデンだの。何かある度に為政者に注目が集まって賛否入り乱れる中で、「政治」において実際の人びとの生活がどうなるか、「政治」から零れ落ちた国内外の人はどうなるのか、そういった地に足を付けた想像力をもつことの大切さを本書は一つのモチーフとしているように思えました。

 

 

 

以下、書きなぐり。

「制限された言論空間を当然ものとして育った中国のZ世代は、その前の世代よりも外国に対する不信感やナショナリズムを強く持つとも指摘されている」(98頁)とありますが、それは中国のSNSをやっているザラザラな肌感覚としてもそうですね。大衆的かつ若者に人気のSNS小紅書(インスタグラム的な感じです)では、日本人が書き込むと罵倒の言葉が飛び交ったり、そういう光景を目にすることもあります。私自身もコロナ禍で中国の友人から「日本は中国人を締め出している。ビザも出していない。外務省に聞いてみろよ」という完全なフェイクニュースで糾弾されたこともあります(ちなみに言われた通り外務省に問い合わせたり、上海日本総領事館のweiboを示したのですが結局ブロックされました)。「反日ナショナリズム」とするのは些か短絡的ですが、一つの例示として。また、その方はヨーロッパで修士号を取っているので別に学歴は関係なさそうです。そんな個人的体験はどうでもいいのですが、まさに「小粉紅」という中国語こそ中国のZ世代を表すにふさわしい言葉ではないでしょうか。(気になる方はググってみてください)もちろんそういう人ばかりではないことを付言しておきます。

 

 「中道であることの難しさ」(177頁)を読んでいて、中道という言葉は往々にして価値中立的印象を与えるにもかかわらず、ハリスのいう「中道」というのはかなり価値にコミットしているのではないかと。しかし、進歩的な人からだと価値へのコミットメントが足りないと指弾されるのでしょうね。私にはハリスの「中道」は手段で、その先に実現したい「価値」があるのではないかと思います。その点で「中道」というか「穏健」というような印象ですね。

 

 ほかにもいろいろ考えることはありますが。ごちそうさまでした。